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清算型遺贈と登記

2013年09月08日
清算型遺贈登記原因証明情報 登記申請書 清算型遺言 遺贈 遺言相続登記 遺留分減殺請求 相続 所有権移転登記 清算型遺贈

【まえがき】清算型遺贈と登記/遺言執行者を当事者とする登記の依頼が


こんにちは。ブロガーのMです。最近、仕事で気になったことを一つ。遺言執行者を当事者とする、いわゆる清算型遺贈に関する登記の依頼があったんです。


不動産の売買契約の売主に、当事者として「遺言執行者」が登場してきました。


ん?何かおかしいゾ?!


何か変な書類を見かけると、ひと睨みで違和感を感じます。


年に数万件ほど、たくさんの登記に携わってきた身としての、長年培った「経験のカン」というやつですネ。


売買契約に遺言執行者が登場してくるケースとしては清算型遺贈のパターンしかありえないはず。しかし、清算型遺贈の場合は、確か遺言執行者ではなく法定相続人が当事者になるのでは?」と、記憶してる知識が一瞬で頭の中を通り抜けていきます。


「清算型遺贈」の具体的なイメージは、下記の図をご参照下さい。


清算型遺贈のイメージ図


つまり、我々としては、遺言執行者が登記に関わるケースとしては「包括遺贈」なり「特定遺贈」なり「遺贈」を登記原因とする所有権移転登記においてのみ、と勉強してきたもので、「清算型遺贈」の場合は、相続登記→売買による所有権移転登記となり、「遺贈」の登記が登場する余地がないため、売買契約書の売主として、当事者の記載が亡○○○○相続人○○○○でなく、遺言執行者弁護士○○○○となっていることに違和感を感じるわけです。


「15年以上の経験で、清算型遺贈に関わったのはほんの2件ほど。ましてや、当事者として遺言執行者が登場したのは初めて。もしかして、制度が変わり、遺言執行者の権限が増大したのか?!」


気になったので、不動産に強いウチの顧問弁護士に聞いてみました。


遺言執行者の「職務権限」と「相続登記」のポイント


「清算型遺言執行は、実務的に難しい分野ですね。多数の司法書士の先生方が頭を悩めている問題です」( ̄▽ ̄;)


ふ~ん…。あまり詳しくないのね(^_^;)


仕方ないので、色々自分で調べることに。


清算型遺言執行に関する先例


  • 「遺言執行者は不動産を売却してその代金中より負債を支払い残額を受遺者に分配する」とある遺言状に基づき、遺言執行者が不動産を売却して買主名義に所有権移転の登記を申請する場合にはその前提として相続による所有権移転の登記を要する。
  • 遺言執行者の資格を証する書面として提出された遺言証書の遺言執行者の表示に住所の記載がなくても、あらためて遺言執行者の選任をする必要はない。

(昭和45年10月5日付民事甲第4160号民事局長回答)

清算型遺言執行に関する先例はこれだけ...


結局、グレーゾーンと思われる部分が結構多い「未開拓の分野」なのですね(汗)


あとは、顧問弁護士に色々と調べてもらったり、管轄の法務局と打ち合わせをして、下記の通りに結論付けました。


遺言執行者の職務権限について


遺言執行者は、清算型遺贈においても「亡○○○○遺言執行者○○○○として売買契約の当事者となり得る」

  1. 遺言執行者は、相続人の代理人とみなす(民法1015条)。
  2. しかし、遺言執行者の職務権限は包括的なもの(民法1012条1項)。
  3. よって、遺言執行者は相続人の代理人であるにもかかわらず、遺言に関し、自己の名において原告又は被告となることが出来る。
(法定訴訟担当。最判51.7.19)


そのため、亡○○○○遺言執行者○○○○ という肩書で、遺言の執行に関して包括的な法律行為が行える。



したがって、相続人の代理人という肩書ではなく、あくまで亡○○○○遺言執行者○○○○という肩書で、法律行為を行える。
ex.預金の解約を「亡○○○○遺言執行者○○○○」として行うのと同様、という考え。


相続登記のポイント


登記識別情報が、登記名義人たる法定相続人全員に通知される。

→遺言執行者は、相続人の法定代理人(民法1015条)。
cf.代位による相続登記


→これにより、売買による所有権移転登記に支障がない(識別情報が通知されるから)。


→連件申請による必要もない(相続人全員に通知されるから)。


司法書士への登記の委任状は、遺言執行者からのみで足りる(+遺言書、死亡を証する書面)。

→遺言執行者は、相続人の法定代理人(民法1015条)。


法定相続人の関与が必要となる場合があるので要注意!


廃棄処分等により、被相続人の除籍謄本につき、生殖能力がある時全ての取得が不能な場合


法定相続人全員からの「相続人が他にないことの証明書」および印鑑証明が必要となってしまう。


相続登記の手続きをもっとお知りになりたい方へおすすめの本


高妻 新 (著)、荒木 文明 (著)
司法書士・行政書士等、実務家必携のバイブル。

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https://www.kajo.co.jp/book/40039000005.html#link_information


売買による所有権移転登記のポイント


司法書士への登記の委任状は、遺言執行者からのみで足りる(+遺言書、死亡を証する書面)。

→遺言執行者は、相続人の法定代理人(民法1015条)。


したがって、報告型の登記原因証明情報を作成する際にも、問題となる点はなし。


清算型遺言執行における登記手続の問題点

 

これで、すっきりしたのですが、あれこれ考えているうちに、「清算型遺言執行における登記手続の問題点」に気付きました...


上記一連の流れをみても明らかなように、法定相続人が全く関与することなく、不知の間に(または内緒で)、相続→売却の登記手続が行えてしまう、ということです。


これによって、遺留分減殺請求の機会すら与えられない場合があり得るということも((((;゚Д゚))))


通常、相続人の地位は、何人たりとも奪うことの出来ない権利として保障されておりますので、例えば「子」が相続人の場合、父親・母親に前婚の時の子がいたりするとすべての「子」が平等に法定相続人となります。


仮に、前婚の子が被相続人たる親と何十年連絡を取り合っていなくとも、「相続人」ですので、後婚の子は「遺産分割協議書」によって前婚の子から印鑑証明書付の署名・捺印(実印)をもらわない限り、勝手に遺産の処分は出来ないわけです。


また、親と喧嘩して家を飛び出し、何十年も行方が分からない「子」がいたらどうでしょうか?


これも、不在者財産管理人を選任して遺産分割をするか、失踪宣告しない限り、他の相続人が勝手に遺産を処分出来ないようなシステムになっているわけです。


ところが、この「清算型遺言執行」の制度により、これらのチェック機能が崩されてしまう危険性がないでしょうか?


具体的な例としては、後婚の子が親を上手くそそのかして、前婚の子に相続させないように「遺言公正証書」を作成させるよう
な場合です。


考えればキリがありませんが、他にも色々なパターンが起こり得ますよね…。


今回私が関わった案件もそうなのですが、売買契約後、除籍謄本が廃棄処分によって足りないため、相続人全員からの、「他に相続人がないことの証明書」が必要だということが判明しました。


理由としては、弁護士が一部の戸籍しか取得しておらず、十分な相続人の調査がなされていなかったためです。


これによって、相続人全員が関与せざるを得ない状況となりましたが、中には連絡をほとんど取り合ってない相続人もいるよう
で、結局、残金決済は予定日に行えませんでした。


仮に、この段階でその相続人が初めて遺産の売却を知り、遺留分減殺請求を行ったらどうなるでしょうか?


売買契約は途中で頓挫し、不動産の引渡しは遅れ、買主は手付金の取戻しに苦労することになるのでしょう…。


最悪、裁判にでもなるかもしれません。


戸籍等、何ら不備がなければ、知られたら都合の悪い相続人に知られず無関与のまま不動産を売却でき、不運にも、一部の書類に不備(戸籍が足りない等)があれば、知られたら都合の悪い相続人に売却がバレてしまい、関与も必要になり、遺留分減殺
請求の機会も与えてしまう…。


この制度には明らかに「不備」がありますよね(^_^;)


「高齢化」が加速するなか、「清算型遺言執行」は今後増えていくと思われます。


遺言執行者には相続人の調査・通知義務を課すとか、何らかの方法によってトラブルを回避すべく、法システムの整備をすべきではないでしょうか?


遺言執行者が当事者となる場合に売買契約を締結する際のチェックすべき2つのポイント


以上から、遺言執行者とこれから不動産の売買契約を結ぼうとする場合、以下の点をしっかりと確認することがポイントになり
ます。


①遺言執行者が、法定相続人の調査をちゃんと行っているのか?(戸籍は全て揃っているか?)

②遺言執行者が、法定相続人・受遺者との利害調整をちゃんと行っているのか?

最低限、上記が済んでない案件は、危険でトラブルの可能性があるものと、肝に銘じたいものですね!


「旧法戸籍」について詳しくお知りになりたい方におすすめの本


大里 知彦 (著)
戸籍事務・法曹・司法書士・金融機関ご担当者必携のバイブル。

 詳細情報  http://www.teihan.co.jp/contents/037.htm


「遺贈」について参考にした書籍はこちら


藤原 勇喜 (著)
類書の少ない遺贈の登記について、余すところなく取り上げられており、参考とすべき判例、先例、登記実例をもれなく集録した、遺贈に関する集大成。

 詳細情報  http://www.teihan.co.jp/new/newtitle0606.htm

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