司法書士Qが画策した土地家屋調査士会からの懲戒処分逃れ~第11章

M

2019-03-20
事件ファイル
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【登場人物】

①司法書士Q→6歳上の、身内の兄。私が転職して約3年後に重大犯罪を犯す。

司法書士で業務禁止の懲戒処分になると同時に、東京法務局の刑事告発により執行猶予付きの有罪判決が下される。

しかし、執行猶予期間中に無許可の測量会社を設立。

さらに、土地家屋調査士の名義借りを受け、無資格業務を長年行なった疑いで現在、法務省と東京法務局が合同調査に着手。この件で、警視庁にも情報提供がされる。

②私(M)→この当時はまだ20代前半。子供の頃、DVを受けた兄に再び関わったことで人生が転落。

この頃から、プライベートがまったくなくなる仕事漬けの日々が始まる。

その結果、十数年後にほぼ末期の胃がんを宣告される。

司法書士Qが画策した土地家屋調査士会からの懲戒処分逃れ~第11章

懲戒又は注意勧告を逃れるために退会しようとする会員を退会させないための措置を求める決議

日本司法書士会連合会は2004年6月25日、第65回定時総会において「懲戒又は注意勧告を逃れるために退会しようとする会員を退会させないための措置を求める決議」を行いました。

これは、綱紀委員会が綱紀事案について調査を開始すると、懲戒や注意勧告を逃れるために退会届を提出する司法書士会員が続出したことを受けての措置でした。

仮に、司法書士に対し一番重い懲戒処分の「業務禁止」が課された場合、3年間は司法書士の資格をはく奪され、司法書士の登録を抹消されます。

3年経過すれば物理的には再び登録可能ですが、審査があります。そこで登録拒否されれば、3年経っても司法書士として仕事はできなくなるのです。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
石谷/毅
司法書士(山口県司法書士会会員)

八神/聖
司法書士(愛知県司法書士会会員)。名城大学法学部特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)



調査に対し、誠実に協力すべき立場にある被調査会員たる司法書士。このような懲戒処分逃れが続出した裏側には、業務禁止に該当するような「確信犯の増加」というものが背景にありました。

ちなみに、司法書士が業務禁止という処分を受けた場合は、過去に再登録が許されたケースはないようです。

司法書士Qのケースはまさにこれと同じものでした。

司法書士Qが画策した土地家屋調査士会からの懲戒処分逃れ~第11章

しかし、司法書士会が業務禁止になった者を再登録拒否するのは倫理上、当たり前のことです。

刑法に該当するような犯罪を犯し、刑罰を受けた者がその後刑期を終えたとしても、国民は安心してその司法書士に依頼できますか?

司法書士Qの場合は、土地家屋調査士もやっていました。行く末のことを考えたQは、今回の相続登記に絡んだ犯罪の刑が確定してしまう前に、土地家屋調査士を退会しました。

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士業同士で横のつながりはありませんので、刑期を終えたあとは、土地家屋調査士の再登録が通りました。司法書士に関しては、再登録の申請を何度おこなっても未だに門前払いされています。

ただし、懲戒逃れによって土地家屋調査士の再登録ができたとしても、それはたまたま法律上の要件を満たしたからに過ぎません。土地家屋調査士会がもう少し綱紀に対し厳しい目を持ちあわせていれば、簡単にはいかなかったはずです。

司法書士Qが画策した土地家屋調査士会からの懲戒処分逃れ~第11章

しかし、現実社会はそんなに甘くはありません。司法書士としてあるまじき凶悪犯罪を犯した彼に対して世間は一斉にバッシングを浴びせました。

司法書士Qが画策した土地家屋調査士会からの懲戒処分逃れ~第11章

インターネット上では、一面に掲載された新聞記事の抜粋がいたるところに引用され、彼の行なった非道ぶりを批判しました。長年経過した現在でも、ネット上にはその痕跡が残ったままです。

当時の新聞には彼の実名のほか、居住地も記載されたため、物珍しさで見物に訪れる人も現れました。

日本の報道機関は実名報道を原則としています。裁判の結果が出る前でも報道がされます。なぜなら、被疑者にもプライバシーがあるものの、報道機関には表現の自由があり、国民には知る権利があるからです。プライバシーと表現の自由、どちらを優先するのかといえば、日本においては表現の自由が優先されているのが現状です。

実名報道後はインターネット上でも記事が公開されます。放置しているとネット上でどんどん拡散してしまうのです。今後の生活を考え記事の削除依頼をしても、名誉棄損やプライバシー権のいずれかが成立している必要があり、実際に認められるかどうかは個々のケースごとに異なります。犯罪が凶悪だったり、司法書士のように社会的責任が重い場合など、すべてが認められるわけではありません。

このように、被疑者のプライバシーが侵害されるものの、実名報道は当分なくならないでしょう。

また、司法書士会の研修でも、司法書士Qの行なった犯罪行為が懲戒事例として取り上げられました。

こんな状況では、土地家屋調査士としてもまともな仕事はできません。元犯罪者が測量や境界確定などで土地に出入りすることを、世間の誰もが恐怖心を抱くのは当然のことです。過去の事件が知れれば、彼に依頼をする者は誰も現れませんでした。

そこで彼は、現在まで別の土地家屋調査士からの下請けという形をとり、依頼者に自分の名前が分からないように身を潜めて仕事を行なうことで生計を立ててきました。

しかしこれは、土地家屋調査士の綱紀上、問題のある行為です。依頼者の了承がなく、不知の間に、実際のところでは別の資格者によって業務が行われている訳ですから。

司法書士Qが画策した土地家屋調査士会からの懲戒処分逃れ~第11章

それ以前の問題として、依頼元であるハウスメーカーがそもそも、このことを知ったら依頼などするはずがありません。ましてや、そのハウスメーカーはコンプライアンスを大切にする大手企業です。

最近になり、ハウスメーカー側も彼のことを知ったようで、案の定、非常に困惑していました。調査に乗り出したようですが、果たして大企業がどのような対処をとるのか非常に興味深いところです。

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