前回からの続き。激痩せを実感したのは2度目となる入院日の事でした。出発前の身支度をしていたら、履いていくパンツが何もない(汗)どれもこれも手の拳一つ分ブカブカになっているんです。
こうやって、首元にストールを巻くのなんていうのも本当に久方ぶり。結局、2時間の遅刻で着きました。そんな僕を待ち受けていた病院からは、今後の治療法に関して大変ショッキングな事を告げられる事になります。
以下は、肺炎(膿胸)の状況下における、胃がん術後の肝転移・再発について、僕と病院側とで今回の入院時に話し合った治療法の変遷です。
治療法なし or 治療しない→緩和ケア
今回の入院時でまず、医師から告げられたのは「リスクが高すぎて癌の治療をする事が出来ない」というものだった。今のところ、懸案となっている肺炎(膿胸)の方は悪化を防げてるものの、肺の中の膿を完全に取り除く事が不可能らしい。
そんな状況下で、仮に癌治療を始めた場合どうなるのだろうか?肺炎が悪化して感染症を引き起こし、全身に広がる可能性が高いとの事だ。もちろん、そうなった時は手の施しようがなく即死間違いない。
だからといって癌の治療を始めない訳にもいかない。血液検査によると、がん細胞は肝転移の発覚時から数百倍にも増殖しており、放置すれば僕は間もなく苦しみながら死ぬ事になる。だから治療は諦めて、早めに緩和ケアの準備をするべきだとこの医師は言っているのだ。
この話しをお聞きした時の僕は、4年間がん治療を放置してきたのだから、悪化してこれから病院のお世話になってもいくら何でも手遅れだろう、だから至極当たり前のことを言われているのだ、と思いつつも少なからずショックを感じない訳にはいかなかった。
だからといって生きている以上、当の本人的には治療を目指して前を進んでいくのが当たり前。そりゃあそうだろうといった感じで、医師も納得されたように首を縦に振っていた。
ちなみに、ここで登場する医師というのは、僕が長年お世話になってきた主治医ではない。主治医とは、最初に救急搬送された時たった数分間お会いしただけだ。こちらの大学病院では教授をなさっているので、がんセンターの頃とは違うのが当たり前。しかし、主治医はどう考えているのか直接お聞きしたい、もしも駄目なのなら他で治療をしてくれそうな病院(がんセンターなど)を紹介して欲しいと伝えた。
がんセンターでセカンドオピニオン
緩和ケアを勧められた僕は、失意の中にいた。しかし、そんな中で突然、主治医が僕の病室を訪ねてくれたのだ。
主治医は僕の肩をポンと叩き、こう言った。
とても嬉しいお言葉だが、セカンドオピニオンに??となった。
「セカンドオピニオンと言うからには、主治医は僕の治療の面倒をみてくれるつもりなのかも」
どうやら、医師と主治医との話しには食い違いがあるのかも知れない。しかしその結果、まだ主治医から見捨てられた訳じゃないんだ、と少し希望が持てた気がしたのだ。
なお、がんセンターのセカンドオピニオンは自由診療のうえ、移動費を含めたら費用が全部で8万円以上もかかりそう(汗)という事で、セカンドオピニオンは取り止めになった。
重粒子線治療
肝臓に転移した癌(肝転移がん)という事なので、昨年に保険適用されて話題の重粒子線治療が僕の癌治療に使えないかどうか気になっていた。
僕は、くまなくネットで調べ上げ、ようやく結論が出たところだったが、主治医も医師も既に結果は調べてあったようだ。
すなわち、「原発巣が胃の場合、肝臓がんの重粒子線治療は保険適用にならない」という残念な結果に終わった。
Q9. 全てのがんが重粒子線治療の対象ですか?
良性腫瘍、胃・十二指腸・小腸・大腸がんの原発病巣、血液腫瘍、皮膚がんの原発病巣は対象になっていません。
がん薬物療法(SOX + HER)療法
先程、セカンドオピニオンという話しがあったのだけれど、気になったのは「そもそも、ファーストオピニオンとはどんな治療法なのだろう」という事。
そこで、医師にお願いして、ファーストオピニオンとして用意されている治療法の詳しい説明を求めた。医師は、ボードを使いながら分かりやすく教えて下さった。それが、がん薬物療法のSOX + HER療法という治療法だと分かった。
これについては、僕自身まだ勉強不足なところがあるため、簡単な紹介程度に留めておきます。また機会を改めてブログ報告するつもりです。
とりあえず、治療のポイントとなっているのが、抗がん剤(TS1、オキサリプラチン)と併用して投与される「ハーセプチン」という分子標的薬の存在。僕の遺伝子は、HER2(+)を持っているが故に相当な効果が期待できるということです。仮に、遺伝子がHER2(-)の場合はオプジーボを投与する事になるらしいが、オプジーボは最後に僕も使えるみたい。
まとめ
したがって、胃がん術後 肝転移・再発した僕の治療法は以下の3段構えとなっているようです。
①抗がん剤(TS1、オキサリプラチン)
②分子標的薬 HER2(+) ハーセプチン
③HER2(-) オプジーボ
僕の原発巣である多発性高度リンパ節転移胃がんの時は、臨床試験でおこなう抗がん剤のみが唯一残された治療法だった。あれから約11年ほどの月日が流れたのだけれど、今では分子標的薬なるものが当然の如く抗がん剤と一緒に名を連ねるなんて…医学は確実に進歩を遂げているのだなあ。
最初に胃癌の肝転移が発覚した2018年。すぐに治療が出来れば良かったけど、この時は色んな意味でそのタイミングではなかった。病状が悪化するまで治療するタイミングはなかったのか?今、改めて思い起こしても多分そんな気がします。
しかし、やっと癌治療をするタイミングが訪れたと思ったら、肺炎(膿胸)がきっかけで、最悪のオマケ付き。この状況下にありながら、もしも治療を開始した場合、僕の死亡率は30%という残念な事になりそうです。